天地結 まほろばや

暮らしの知恵2026.10.04読了目安 4分

家相と現代の間取り——鬼門を、こわがらないで

文:Ray(光の大黒柱建て師・一級建築士)

この記事の要点

  • 家相では北東を鬼門、南西を裏鬼門と呼び、水まわりや玄関の配置を慎んできました
  • その背景には、冷えと湿気、西日の暑さ、上下水道のない時代の衛生という実理があります
  • 断熱・排水設備・24時間換気が、昔の心配の多くを受け持ってくれています
  • 鬼門は「この一角は湿気と冷えに気を配って」という、家からのメモとして読み替えます

間取り図を眺めていて、「北東にトイレがある……鬼門って、大丈夫なのかな」と手が止まったことはありませんか。ご相談でもよく伺うお話です。今日は一級建築士として、家相の鬼門を今の住まいにどう読み替えるか、その理由からお話ししますね。

鬼門は、昔の家の「弱点メモ」でした

家相では、北東を鬼門、南西を裏鬼門と呼びます。この二つの方位に玄関や水まわりを置くことを慎む、という教えがあります。家相は、方位や陰陽の考え方をもとに、日本の住まいの中で育ってきた見方です。

設備設計の目で見ると、この教えには実理で説明できる部分がかなりあります。北東は朝のうちしか日が入らず、冬は冷えて、湿気が抜けにくい一角です。南西は午後の強い西日を受け、夏は熱がこもりやすい方角です。

そして昔の家には、上下水道も換気扇もありませんでした。井戸、汲み取り式の便所、土間の台所。乾きにくい北東や熱のこもる南西に水や汚れを置けば、においや湿気、衛生の心配が大きくなります。

鬼門の教えは、そうした暮らしの知恵を、覚えやすい形で残したものだと私は読んでいます。こわいお話ではなく、昔の人が書き残してくれた「この一角は気をつけてね」というメモのようなものなんです。

湿気がこもりやすい水まわりは、小窓と換気でからりと

昔の心配を、今の設備はどこまで受け持っているか

では、その「弱点」は今の家でどうなっているのでしょう。昔の心配と、今の住まいの備えを並べてみます。

昔の心配その理由今の住まいでの備え
北東の冷えと湿気日が当たらず、壁や床が乾きにくい断熱材と気密、複層ガラスの窓で冷えと結露を抑える
水まわりのにおいと衛生汲み取り式の便所、排水の設備がない下水道や浄化槽。排水口の下にたまった水が、においのふたになる
空気がこもる窓を開けるほかに換気の手段がない換気扇と24時間換気で、窓を閉めていても空気が入れ替わる
南西の西日と暑さ午後の日射で熱がたまる庇やすだれ、遮熱のガラスやカーテン、冷房

なかでも大きいのが換気です。2003年7月に施行された改正建築基準法のシックハウス対策で、それ以降に着工する住宅の居室には、原則として24時間換気のような機械換気の設備が求められるようになりました。目安は、一時間に部屋の空気の半分ほどが入れ替わる量です。

昔の家相が心配していたことの多くは、いまは設備が受け持ってくれています。だから、北東に水まわりがあるというだけで、身構えなくて大丈夫ですよ。

窓を少し開けるだけでも、空気は巡りはじめます

鬼門の一角を、今の暮らしで整えるには

ただし、設備は「動いていれば」の話です。家相の教えを、「この一角は冷えと湿気に気を配って」という合図に読み替えて、手入れにつなげてみてください。風水でも、湿って暗い場所では氣がよどみやすいと考えます。

  • 24時間換気を止めない:壁のスイッチや、給気口のふたが閉じたままになっていないかを確かめる
  • フィルターを掃除する:給気口と換気扇のフィルターは、ほこりで目詰まりすると空気の量が落ちます
  • 水気を残さない:浴室や洗面は、使い終わりにひと拭き。北東の水まわりほど効きます
  • 明るさを足す:照明を少し明るめにして、小さな緑や花を置く。暗い一角に色が入ると、足を運ぶ回数も増えます
  • 南西は熱をためない:西日の入る窓はすだれやカーテンで和らげ、ごみや生ものを置きっぱなしにしない

これから家を探す方は、鬼門だけで候補から外さずに、日当たり・風通し・換気の設備とあわせて見てみてくださいね。方位は、判断材料のひとつとして置いておけば十分です。

今日のひとこと行動

家の北東の一角に立って、給気口のふたが開いているか、水まわりに湿り気が残っていないかを、手で確かめてみる。

触れてみると、その一角のことがよくわかります。こわがる場所から、手をかける場所へ。それだけで、家との付き合い方はやわらかく変わっていきます。

秋雨で窓を開けにくい日が続くと、北側の部屋には湿気がこもりがちです。8日の寒露が近づき、露が冷たく感じられはじめる今は、冷えが本格的になる前に換気まわりを見ておくのにちょうどいい時期です。北側の床はひんやりしやすいので、点検のときは足元を冷やさないよう、靴下やスリッパでどうぞ。

Ray

Ray光の大黒柱建て師/一級建築士

建築の実理と風水の知恵で「家と心」をともに整える、天地結まほろばや主宰。プロフィール

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