天地結 まほろばや

こころ2026.09.22読了目安 4

比べる心に気づいたら——うらやましさは、望みの方向を指す矢印

文:Ray光の大黒柱建て師・一級建築士)

この記事の要点

  • 「うらやましい」は、自分が向きたい方向を指す矢印。感じた時点で望みの在りかが見えている
  • よその図面をそのまま自分の土地に置けないように、望みの形は敷地の条件ごとに変わる
  • 比べることを「採点」に使うと重くなり、「方向の確認」に使うと軽くなる
  • 紙に三列で書き出すと、矢印の先が自分の言葉になる

SNSを閉じたあとに、胸のあたりがざわっとする。あの人はもう次の場所にいるのに、私は——そんな夜、ありませんか。今日は、その「うらやましい」という気持ちを、責めるのではなく読み解くお話をしますね。

うらやましさは、方向を指しています

私は長いあいだ、建物の設計を仕事にしてきました。設計でいちばん最初にするのは、きれいな絵を描くことではありません。敷地を測ることです。

よそのお宅の間取りがどんなに素敵でも、その図面をそのまま自分の土地に置くことはできません。道路がどちら側にあるか、隣の家との距離、日が差し込む時間、風の抜ける向き。条件がひとつ違うだけで、同じ間取りが暮らしにくい家に変わってしまいます。だから設計者は、まず「この土地は、どちらを向いているのか」を確かめるところから始めます。

比べる心も、これとよく似た働きをしています。「うらやましい」と感じた瞬間、心はたしかにひとつの方向を指しています。その矢印は相手に向いているようでいて、ほんとうは自分が行きたいほうを指しているんです。

風水では、氣(目に見えないエネルギー)は向きを持って流れるものと考えます。家に氣の通り道があるように、心にも向きがある。うらやましさは、その向きが自分でも思いがけないかたちで表に出た瞬間だと、私は考えています。

同じ道でも、歩幅も見える景色も人それぞれ

反応した、ということは

ひとつ、確かめてみてほしいことがあります。心理学では、嫉妬は自分が関心を持っている領域でしか起きにくいものとして説明されます。

将棋にふれたことのない人が、棋士の昇段を見てざわつくことはまずありません。星の数ほどある職業のうち、心が動くのはほんの数えるほど。つまり、反応したという事実そのものが、「ここは私に関係のある場所です」というお知らせなんです。無関心の海のなかで、そこだけが光ったということですから。

比べる力自体も、もともとは役に立つ力です。設計の仕事でも、他の建物の事例をいくつも並べて見比べます。そうしないと、自分の案がどのくらいの水準なのか、どこが足りないのかが見えてこないからです。

ただ、同じ「見比べる」でも、使い道が二つに分かれます。優劣の採点に使うと重くなり、方向の確認に使うと軽くなる。 採点は勝ち負けで終わってしまいますが、確認には続きがあります。「では、私の敷地ではどう建てようか」という続きです。

お茶をいれる数分で、心の向きを確かめてみる

矢印の先を、自分の言葉に直す

もやもやしたままだと、矢印は相手に刺さったままになります。紙に三列で書き出すと、先が自分のほうへ向き直ります。手帳の隅でも、レシートの裏でも大丈夫ですよ。

心がざわついた相手反応したのはどの部分か私の場合、どんな形になるか
独立した元同僚自分で時間を決めていること週に半日、誰にも予定を入れない日を作る
家が素敵な友人玄関に花が飾ってあったこと玄関に一輪だけ置いてみる
表彰された後輩きちんと評価されていること今年やったことを箇条書きで残しておく

三列目まで書けると、うらやましさは具体的な一歩に変わります。ここで大事なのは、相手の暮らしをそのまま真似しないことです。独立した人の働き方が輝いて見えても、家族の形も、体力も、住んでいる場所も違う。敷地の条件が違えば、最適な建て方は変わります。欲しいのは相手の図面ではなく、その図面が叶えていた「中身」のほうなんです。

もし三列目が書けないときは、まだ矢印の先がぼんやりしているというだけ。何日か置いてから、もう一度眺めてみてください。

今日の問いかけ

最近いちばん心がざわついた人の、どの部分に反応しましたか?

人そのものではなく、「どの部分か」まで絞るのがこつです。肩書きなのか、時間の使い方なのか、周りとの関わり方なのか。絞れたぶんだけ、それは自分の望みの輪郭になります。比べてしまった自分を責める必要は、どこにもありません。関心があるからこそ、心が動いただけですから。

お彼岸の最中で、明日はもう秋分。昼と夜の長さが並ぶころは、自分の一年を静かに見渡したくなる時季です。朝晩の涼しさで体が驚きやすいので、一枚羽織るものを手の届くところに置いておいてくださいね。気分の落ち込みが長く続くときは、ひとりで抱えず、早めに専門家を頼ってくださいね。今日は温かいものを一杯、自分のためにいれてみませんか。

Ray

Ray光の大黒柱建て師/一級建築士

建築の実理と風水の知恵で「家と心」をともに整える、天地結まほろばや主宰。プロフィール

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